天間荘の3姉妹
【レビュー】天間荘の三姉妹

目次 [とじる]

| 見どころ

| 主な出演者

| 評価

| 感想

| あらすじ(ネタバレあり)

予期せぬことで突然に命を奪われたり、大切な人・愛する人を思いがけず失ったりすることに、人はどのように向き合っていくのか、人の生死をどう捉えるのか。哲学的、宗教的な側面も感じながら、のんが演じる主人公「たまえ」の変化に引き込まれていく感動的な作品です。豪華キャストの俳優陣・女優陣がその演技力を惜しみなく発揮し、意外なところに意外な人が顔を出すというサプライズもあります。
プスタポンテプロフィール画像
38年間のサラリーマン経験のある年金生活者(シニア) 転勤族ゆえ単身赴任歴は約20年、会社は3社を経験。映画をよく見るようになったのは母親の影響もあり、小学生の頃。九州生まれ、関西在住のA型山羊座、干支は亥です。
見どころ

予期せぬことで突然に命を奪われたり、大切な人・愛する人を思いがけず失ったりすることに、人はどのように向き合っていくのか、人の生死をどう捉えるのか。哲学的、宗教的な側面も感じながら、のんが演じる主人公「たまえ」の変化に引き込まれていく感動的な作品です。豪華キャストの俳優陣・女優陣がその演技力を惜しみなく発揮し、意外なところに意外な人が顔を出すというサプライズもあります。

主な出演者

のん、門脇麦、大島優子、高良健吾、山谷花純、柳葉敏郎、中村雅俊、三田佳子、永瀬正敏、寺島しのぶ、柴咲コウ、平山浩行、萩原利久他

評価

★★★★☆

感想

序盤は臨死状態になった人たちが天間荘で休養しながら、最後にこれまでの人生を振り返る走馬灯を観て、その後の運命(神に召されるのか現世に戻るのか)を自分で決めるといった空想ファンタジーっぽい映画かなと観ていました。ところが、天間荘のある三ツ瀬町には、コミュニティが存在して、他の人たちも日常生活を送っている。この世界は一体何?という感じになりながら、この作品を観ることになりました。

物語は大きく3つの流れがあり、たまえ(のん)の周囲の人たちとの人間模様、災害で亡くなった三ツ瀬の人たちの生き様、3姉妹(長女のぞみ=大島優子、次女かなえ=門脇麦、三女たまえ=のん)の父親を取り巻く家族の絆。たまえは天間荘に来て、宿泊客としてではなく、従業員として働き、宿泊している人たちを現世に戻ってみたいという気持ちに変えていきます。特に天間荘に1ヶ月以上滞在して気丈に振る舞いながらも、実は臆病な財前玲子(三田佳子)に走馬灯を観る勇気を与え、現実と向き合うきっかけになるシーンにはウルッとさせられます。

三ツ瀬町に住んでいる人たちは、時の止まった空間に身を置き、日々過ごしていくことに疑問を感じつつも惰性に流されていることに天間荘の大女将恵子(寺島しのぶ)から一石を投じられます。恵子役の寺島しのぶの演技は秀逸で、飲んだくれの口の悪い意地悪義母から、たまえを自慢の娘と抱擁する優しい義母まで演じています。

3姉妹の父親である小川清志(永瀬正敏)は、今までのろくでもない行動から家族に顔を合わせられないと思いつつも、心配になって、たまえを陰ながら見守るといったダメ親父を演じています。家族を思う気持ちが強ければ、紆余曲折があったとしても、元の鞘に納まることが出来るといったシーンには、ほっこりした感じにもなります。

人は平等に一度しかない、いつ終わるか分からない人生というレールの上を走っています。全編を通じて、その時間軸の中で自分が不幸になったり、予期せぬアクシデントに遭遇したりすると、人はどのように現実と向き合い、寄り添い、対処していくのか。自分にとって大切な人、愛する人を突然失った時に、残された人たちは、その喪失感や哀しみにどう向き合って生きていくのか。亡くなった人の記憶や気持ちは、どこに宿るのかといったことを問いかけられる作品と感じましたが、重たさや暗さといったことは全く感じないものでした。

三ツ瀬の町を散策するシーンもあり、きれいな滝や海をもあり、映像として楽しめる点もあります。豪華キャストが出演しており、それぞれの演技力が随所で観られます。三ツ瀬の住人として意外な人が顔を出すというサプライズもあります。

たまえだけが天間荘をはじめとする三ツ瀬の記憶を持ったまま現世に戻り、芹沢優那(山谷花純)との再会後に改装された水族館でイルカのタクトとも再会を果たし、イルカトレーナーとしてデビューするラストシーンでは年のせいか涙腺が緩くなってしまいました(悲しい涙というより感涙です)。テーマは少し重たいように感じるものの、とても大切なことであり、多くの人が映画館に足を運んで観てもらえると良いなぁと感じた作品です。

あらすじ(ネタバレあり)

交通事故で臨死状態にある小川たまえ(のん)を天界の門番イズコ(柴咲コウ)が天空と現世の間にある天間荘に送り届けるところから物語は始まります。たまえは天間荘に宿泊し、自分の今後の生き方(神に召されるのか現世に戻るのか)を決めるように求められます。天間荘は大女将の恵子(寺島しのぶ)と女将の長女のぞみ(大島優子)と次女かなえ(門脇麦)によって運営されていますが、この三人は親子であり、女将のぞみと、イルカトレーナーとして働くかなえは、実はたまえの腹違いの姉妹でした。

たまえは宿泊客としてではなく、従業員として働くことを望み、天間荘に長く宿泊している財前玲子(三田佳子)の客室に挨拶へ行き、「見どころがある」と一目置かれることになります。最初は気難しかった財前が、明るく天真爛漫な、たまえの性格に魅了され、徐々に心を開くようになり、ある時、財前はたまえの提案で、生前の記憶を振り返ることが出来る「走馬灯」を見ることになります。「走馬灯」を全て見た後、財前は昏睡状態の自身を見守る娘と孫の存在を知ります。

イズコにより新たな宿泊客が天間荘へ連れてこられます。学校でいじめられ、自殺未遂で臨死状態となっている芦沢優那(山谷花純)という若い女性です。たまえは優那にも優しく接し、2人は友達になります。たまえと接する内に、再び絵を描くことへの情熱を取り戻した優那は、たまえと現世に戻ることを望みます。現世では孤独の身だった、たまえは家族と共に過ごせる天間荘の生活を失いたくないことから、現世に戻ることを拒否します。
たまえにも裏切られたと感じた優那は、かなえと共にイルカトレーナーの練習をしている、たまえの所に行き、目の前でかなえを刺します。かなえからは血が流れることが無く、優那は全員死んでいると訴えますが、たまえは姉を傷つけようとした優那を許しません。天間荘に戻った優那は、待っていたイズコから選択を迫られます。

現世に戻るのも、天界に旅立つのも、どちらも拒否する優那を見かねた財前は「私がこの子を連れて行く。」と天間荘から出ることを伝えます。進む道は優那に任せ、財前は優那と共に天間荘をチェックアウトします。

常にサングラスとマスクで顔を隠しているタクシードライバーですが、実は3姉妹の父親、小川清志(永瀬正敏)でした。清志は、生前、一人になったたまえを受け入れてもらおうと、現世にあった天間荘を訪ねるために三ツ瀬を訪れ、地震により津波が発生し、帰らぬ人となっていました。三ツ瀬は、天界と現世の間の街になってしまったため、清志も三ツ瀬の住人になっていました。家族との再会において頭を下げる清志に対して、天間荘の親子は、カメラマンとして家族の写真を撮影することを条件に今までのことを水に流すことにします。

三ツ瀬でのたまえのイルカトレーナーとしてのデビューは、三ツ瀬の住人が多く集う中、イルカ(タクト)は、たまえの指示を聞かず、イルカトレーナーとして失敗します。その様子を見て笑う三ツ瀬の住人に恵子は「この子は生きている、未来がある、私達とは違う。」と三ツ瀬を終わらせることを提案し、イズコに同意を求めます。甚大な被害で、多くの命が失われた三ツ瀬を時が止まったまま残していたイズコですが、どこかで終わらせないといけないことは分かっていました。

たまえは三ツ瀬の人々の想いを受け入れ、現世に戻ることを決意します。その夜は天間荘に三ツ瀬の住人が集まり、最期の宴会が行われます。宴会終了後、次々に昇天する三ツ瀬の住人の魂を見ながら、たまえも家族との最後の団らんを楽しみます。両親、姉の家族は、たまえが疲れて眠っている間に昇天していきます。

三ツ瀬の記憶を持ったまま、地上に戻ったたまえは優那と再会し、共に水族館を訪れます。そこでは三ツ瀬の災害から生き残った早乙女海斗(萩原利久)が働いており、たまえは海斗の父親、早乙女勝造(平山浩行)から受け取った伝言を聞かせます。かつてかなえが勤めていた水族館でたまえはイルカトレーナーとしてデビューし、三ツ瀬の災害で生き残った方へ熱いメッセージを送ります。

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